「クローンを,なにかに利用したあとだとしても,殺すのは殺人でしかありません。クローンを殺してもよいのなら,そのクローンの元となったあなたが殺されてもよいはずですから」。
quote:国連の委員会は,人間の尊厳を保たない,人間のクローン作成を全面的に禁止する決議を承認した。191の加盟国のうち,賛成71,反対35,多くのイスラム教国を含む43の国が棄権した。ただこの決着は,政治的な声明に過ぎず,法的な拘束力はない。治療的クローンを支持するグループのひとつである韓国の代表は,「人間の生命は,異分野や宗教的な考えと別個のもの」と述べる。同じく反対の投票を行った英国の代表は,数百万の人々とその家族の希望のため,クローン研究は支持されるべきと述べた(日本も反対票を投じている)。
「わたしのところでは非合法ながら数日で人間のクローンを作成することができるのですが,ではクローンを作成することがあるかと云うと,実際のところ,ほとんどないのです。クローンを作成すると云うことは,ワイヤード上にアバターを作るのとはまったく違います。作成したクローンは,クローンと云うよりは単なる人間です。あなたが奴隷になれと云われてなんの躊躇もなく奴隷になんかなれないように,クローンも思うままに操ることはできません。あなたがなにか犯罪を犯し,代わりにクローンに捕まってもらおうとしたとしても,あなたが捕まりたくないように,クローンも捕まりたくありません。あなたが病気に冒されているなら作成したクローンも同様で,なんの解決にもなりません。なにか有益なクローンの使い道を,あなたは思いつくでしょうか?
そして,たぶんこれがいちばん大きいのだと思うのですが,ほとんどの人は自分と同じ人間がもうひとりできてしまうことを,うれしいとは思わないものです。自分と同じものを作りたいなんて人間は,おおむねかなりの嫌われ者で,わたしも会うのを拒否することが多いです。人は,たとえ自分と似た人に出会ったとしても,似ている部分以上の違う部分があるはずと思うものです。もしあまりにも似過ぎている人がいたら,わざと距離を置くことになるでしょう。それが自分を卑下しているからか,特異な存在と思いたいからか変わりませんが,とにかくクローンを作れるとしてもそれは変わりません。クローンは実際に禁止されているわけですが,あくまでそれは建て前みたいな文面でしかないんですよ」。
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